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叔父さんと僕

第4章 叔父さんと僕とひとりぼっち

「おかえりなさい、昭彦さん。」

「…ただいま。」

一瞬目を見開いた昭彦さんは、フイッと顔をそらしてそう言う。
いつもの動作となったこれは、きっとまだ昭彦さんが僕に慣れていない証拠だろう。
僕が来る前は、一人暮らしだったのかな。

ひとりぼっちだったのかな。僕と同じように。

「あー疲れた。」

「昭彦さん先にお風呂入っててくれる?今日パスタなんだ。だから帰ってきてから麺を茹でようと思って。」

「あーそうするわ。」

僕にカバンを渡すその手は、そのままの僕の頭へ向かう。

「サンキュ。」

そう言って、僕の髪をクシャっと撫でる。

「…うん。」

嬉しい

お母さんは僕が中学に入ってから、気を遣ってあまり僕に触れなくなった。
少しさみしかった。

でも、昭彦さんはよくこうやって僕に触れてくれる。
きっと僕の家庭事情をわかってくれているからだろう。
けどやっぱりこれも気を遣って、と考えると複雑だ。
だからなるべく考えないでいる。

昭彦さんのシャワーの音を聞きながら、僕は麺を茹でる。
今日は鮭の入ったクリームパスタだ。
昭彦さんの口に合うといいな。

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