テキストサイズ

闇夜に輝く

第19章 若菜と洋子さん

業務に関しては副主任兼務になったと言っても、元々便利使いにされていた海斗にはそこまでの負担はなかった。
ホール業務を西野さん秋山さん山田君に指示し、自分はその三人の穴を埋めるように動く。
そしてエスコートや延長確認、会計などをこなしていく。
たまに坂東さんが何かの拍子に身動きが取れない時に限り、海斗が付け回しを代理で行ったりしていた。

付け回しに関してはまだまだ経験が浅く、フリーの客にどのキャストを付けるかは坂東さんにインカムで確認したり、増田さんに聞いたりしながら行っていた。
また、付け回しを手伝う都合上、自分の担当以外のキャストとのコミュニケーションも取らなければならず、キャストとの会話や私語が解禁となった。
解禁と言っても直接「今日から解禁な」と言われたわけではなく、自然の流れでそうなった。
言い換えれば周りから見て、夜の住人として板に付いてきたということ。
海斗自身は増田さんや坂東さん、優矢君を間近で見ているせいもあってまだまだそうは思っていない。

キャストとのコミュニケーションが増えたことに伴い、会話も敬語から砕けた口調へと変化していく。
敬語での会話はどうしても業務命令のような雰囲気になってしまう。
なので接客前にキャストの緊張感を取り除くため、仕事とは関係ない話を交えながらキャストのテンションを上げる様に意識して口調を変えた。
するとキャスト達からも「筑波さん」や「ボーイさん」といった呼び方から、「海斗さん」と名前で呼ばれる事が多くなった。

ただし、お客さんの前では必ず敬語を使う。やはりキャストとボーイの関係性を勘ぐるお客さんが多い為、無用な誤解を生まないように気をつけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ