闇夜に輝く
第45章 闇夜に輝く夜の蝶
早朝に差し掛かる頃、本日最後の客を見送り営業が終了した。
そしてラストまで残っていたキャスト、ボーイ達に見送られ、理子さんは花束と大量の荷物を持って笑顔でこの業界を去っていった。
ある一つの伝説を残して。
それに最初に気付いたのは海斗だった。
閉店作業を終わらせ、誰も居ない更衣室の壁の成績表。
海斗は今月最後の書き込みをしていた。
売上欄の棒グラフを書き込んだ時、思わず笑ってしまった。
すでに今月の中旬時点で、理子さんの成績だけ紙を付け足していた。
それが今日の売上で天井に届き、それでも足りない。
そこから天井伝いに紙を折り返し、棒グラフを更に伸ばす。
そして30㎝ほど行ったところまで伸ばしてやっと書き込みを終えた。
指名売上560万。
2番目のキャストでさえ200万に届いていないその成績表の光景に、しばらくその場に座って茫然と眺めてしまった。
しかし、その光景に気を取られ、ある重大な事実を見落としていた事にその時点ではまだ海斗は気付いていなかった。