闇夜に輝く
第50章 パトロン
その後、結衣菜さんは保険の受取人を断ったが、山口様の方が結衣菜さんと何らかの繋がりがないと不安な様で熱心に説得されて、結局受取人にサインをしたらしい。
それ以来、山口様は結衣菜さん指名でさらに足繁く通う様になる。
その際、ボーイにも
「結衣菜の事をよろしく頼みます」
と、親が学校の先生にお願いするような雰囲気で毎回色々な差し入れを持ってくるようになってしまった。
お陰で結衣菜さんも山口様という太客を軸に成績をガンガン伸ばしていく。
また一人、特殊な才能を持った売れっ子キャストが誕生した。
しかし、海斗に嬉しいという感情は無かった。
きっと今まで手掛けたキャスト以上にその子の人生を変えてしまったという想いが強かったからなのかもしれない。
また一歩、海斗の心の闇が深く黒くなっていく。しかしそんな感情を振り返る暇もない程、日々雪だるま式に海斗の仕事が増えていった。
そして徐々に自分自身でさえ、本心や、素直な感情が何なのかわからなくなっていた。