闇夜に輝く
第10章 初シャンパン
咲さんの接客準備が完了した時はオープン間もない時間帯。
初接客は楓さんの指名客へのヘルプとなった。
このお客さんは楓さんの太客で毎日のように比較的早い時間から飲みに来る土屋様という40代のマンション経営者。
楓さんが腐れ縁と豪語するほど信頼関係の構築された、お金持ち特有のおおらかな客。
まだ楓さんのヘアメイクが終わっていなかった為、咲さんにヘルプの白羽の矢が立った。
咲さんはヘルプの役割と禁止行為を坂東さんから説明された後、席に着いていた。
海斗は気になりつつも通常業務をこなしていた。
不意に増田さんがフロアへ行き、そのお客さんと飲み出す。
きっと上手くドリンクをもらうつもりなのだろう。
そしてスムーズにドリンクオーダーが入り、楓さんの指名売上げにも貢献していく。
会話内容もお客さんと増田さんが一緒になって咲さんの初々しい姿をいじって笑いに変えていく。
その会話の途中でも、増田さんがそっとお客さんのグラスを咲さんの前に置いて、こっそりと水割りを継ぎ足すタイミングを教えてあげていた。