闇夜に輝く
第55章 泥沼の先に
複数人の客の席で、キャストが無意識の内に楓さんに気を遣った接客をするようになる。
それはニューアクトレスに入店して日が浅いキャストほど、その傾向は顕著になった。
キャバクラに来る客は基本的にキャストをからかったり、けなしたりして会話を楽しんでいる事が多い。
自分の会社の部下や女子社員に対してそんな発言をすると、パワハラやセクハラなどで問題になるご時世だが、ここではそんな心配もない。
逆にキャストがノリよく返してくれたり、自虐的におどけたりしてくれることを期待している。
また同じ席にいるキャストもお客を真剣には咎めない。
客に同調しつつも、それとなくからかわれたキャストのフォローをする様な会話を自然としている。
しかし、楓さんが客にけなされてしまうと、そういったキャストは必死でフォローに走る。
キャスト達は良かれと思ってそうしているのだが、これが全く違う印象を客に与えてしまう。
客は楓さんの事を怖い女なんだとか、嫌われてるんだと思ってしまう。
また、そんなギクシャクしたキャスト同士のコンビネーションでは、席全体が盛り上がらない。