闇夜に輝く
第10章 初シャンパン
海斗は咲さんに向き直る。
「そろそろ送りの車出るよ。いける?」
「はい」
「じゃぁフロントに伝えるね。店前に優矢くんってイケメンがいるからその人の指示で車乗ってね。何台か送りの車が停まってるから間違えないように気を付けて」
海斗がそう伝えて立ち上がるように咲さんを促す。
けれど咲さんは急に怪訝な顔になっていた。
その変化に気になり海斗が聞く。
「ん?どうした?」
「イケメンですかー。私、イケメン苦手なんですよね」
「何でよ」
「だってイケメンって性格悪いですもん。女遊びするんですもん。何より元彼がイケメンだったんですよー」
口を尖らせて可愛く不機嫌な顔を作る。
「じゃぁ俺は安心だねー」
「海斗さんは……、うーん、微妙です。じゃ、今日はありがとうございました。お先に失礼します」
「ははは、うん。今日はありがとう。明日もよろしくね。お疲れ様」
そうして咲さんの初出勤が終わった。
出勤時と違い、緊張が解けた咲さんは明るく帰っていく。
海斗はその後ろ姿を見送りながら、無事に初日が終わった事に少しホッとしていた。
それと同時に咲さんならこの世界でもやっていける可能性が高いのではないかと思い直していた。