神隠しの杜
第3章 神隠しに遭った少年
どれくらい時間は、過ぎたのだろう。
ずっと背景は夕闇のまま変わらない。お社と、お社を囲む無数の彼岸花しか、ない。
感覚がおかしくなりそうだった。
歩が思い出す事は隼政と雪芭の事で、二人が無事ならよかったと思う。
思考すらめんどくさくなり、歩はお社の壁にもたれかかったまま、無意味な時間を過ごしていた。
ここでは時間の感覚もわからないから、そんな事気にする必要などないかもしれないが。
その時、空から声がした。
「大丈夫か?いや、そんなはずないな……お前はまだヒトに近いから」
見上げれば、お社の屋根に緋葉がいた。
いつも屋根の上にいるなあ、とそんなどうでもいい事を頭の片隅で思う。
そんな事今はどうだっていいのに。意味のない事ばかり考えてしまう自分に、歩は苦笑した。