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神隠しの杜

第14章 繋いだ命の対価

ちょっとの距離でも今の緋葉には遠く感じられた。



畑仕事をするクワがそのまま放置され、耕した場所も滅茶苦茶になっている。



今になって思えば、ここの村で子供がいなくなった事が立て続けに続き、大人たちがこうぼやいていたのを思い出す。



『祠の神様に祈っても神隠しは続く、子供は戻ってこない。もうあれしかない』



あれ、とは、人身御供の事。すなわち、神様にいけにえとして人間の身体を差し出す。



「…………あれ、オレの事だったんだ」



緋葉は自嘲気味に呟く。






自分だけが何も知らなかった、両親も何も言わなかった、誰も、何も言わなかった――――






自分だけが――――






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