神隠しの杜
第15章 再会
冬音を助けたい。
ただ一つの自分の願いのために、隠れの町で築いてきた日常すべてを失った。
水露と隼政の事だけが唯一気がかりで、自分の願いのために犠牲にしておいて、まだ捨てきれない今まで一緒に過ごした思い出。自分の願いを捨てていたらあったかもしれない、幸せな日常。
今となってはもうずいぶん遠いものになってしまった。
自らが強く望む事で、神隠しに遭った。緋葉と接触し冬音を助ける術は夕羅――神隠しと対峙し、一か八かの賭けにでろというものだった。
シクカミカは緋葉が神隠しという長い時を生き、得た力らしい。
その力の半分を緋葉は真冬に渡し、冬音を“神隠し”からも“ヒト”からも助けてほしいと、言われ真冬は迷う事なく頷いた。
緋葉は最後にこう言った。
「神隠しを終わらせる、例えどんな結末になっても。生きながらえたけど、結局こうしてまた悲しみを生んでしまった。ヒトの犯した罪はヒトが、終らせなければ」
かなしく寂しい笑いを浮かべながら。