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20年 あなたと歩いた時間

第5章 20歳

「これでいつでも連絡とれるな。通信料も払っとくからさ。やり方覚えろよ」
「うん。ありがとう。ふふ」
「お揃い」

そう言って流星は、同じタイプの青いベルを
出した。

「ほら、見て」

裏返すと、学祭で撮ったシールタイプの写真が
貼ってあった。初めて一緒に撮ったものだ。

「流星がそんなことするなんて意外」
「え?そうかな。普通の二十歳の男子だって言ってんだろ。今からだって…」
「ん?」
「…二十歳になったのぞみを襲おうとしてる」

流星が体を乗り出して、こたつ越しにキスをした。

「ほら、な」
「ん」

何度もキスをして、何度も体を重ねて、
その度に私は流星を好きになる。
いとおしく思う。
離れたくないと思う。
こうする度に気が遠くなりそうなくらい、
胸が締め付けられて、
流星は私の一部になっていく気さえする。

「のぞみ…」

流星。流星。どこにも行かないで…。
私はありったけの力で流星の背中を
抱きしめた。流星も、同じ力で私を抱いた。
快楽に顔が歪み、
身体中が流星で満ちていく。
細く高く、まるで自分ではないかのような
声が流星という闇に吸い込まれていく。
熱い体と体が離れたくないと叫んでいる。
流れ星。
それは、漆黒の闇を駆け抜ける一筋の光。
空を見上げなければ、出会うことのない
はるか遠い光。
ほんのわずかな時間だけ輝いて消滅する、
潔い光。
たくさんの逸話を持ち、
人々はその一瞬に願いを唱える。
あなたに、憧れた。
いつも、守ってくれた。
そして、願いを叶えてくれた。

私の願い。
それは一度も流星には言わなかったのに、
流星は知っていた。何もかも知っていた。
自分が間もなくこの世を去ることも。

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