秘密の兄妹
第13章 【好き】の自覚
俺が家の中に入ってダイニングに行くと、紫織がダイニングのテーブルにスーパーの袋を乗せて、ぼぅっと立っていた。
「……紫織…」
「…美加さん、帰っちゃったの…?」
「ああ…」
紫織は俺の方を見ずに、震える声で俺に尋ねる。
「帰らせちゃってよかったの…?美加さんは元カノじゃないの?」
「……紫織、一応言っておくけど、体の関係はあっても俺に【彼女】がいたことは一度もない。誤解すんな…」
「言い訳なんてしなくていいよ……」
「え…?」
紫織は俺の方を振り向くと、今にも泣き出しそうな顔をして笑いかける。
「私はお兄ちゃんのオモチャだもん。オモチャにいちいち言い訳とかしなくていいし、誤解を解くのは【彼女】とか【好きな人】にすることだよ。オモチャはちゃんと身の程をわきまえてるから大丈夫……。」
「…………」
俺は何も言えなかった。
俺が黙ってると、紫織の目からボロボロと涙がこぼれ落ちてきた。
「あれ?目にゴミが入っちゃったみたい…なんか涙が止まらないや……」
「…紫織」
俺は紫織のことをそっと抱きしめた。
「ひっく…ひっく…今日は今、ぎゅってしてくれるんだ……?毎日私との約束守ってくれてありがとう、お兄ちゃん…」
「……紫織、今夜俺の相手して……」
「ぐすっ、ぐすっ…うん、いいよ……」
紫織はそう言うと、泣きながら俺にきつく抱きついてきた。
「…………」