春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第9章 その時が来るまで
「ユ、ユキ……ッ」
プルプル震えながら、胸に手を当てて
振り返った春ちゃんが、早い呼吸を繰り返す。
「驚かさないでよ……心臓止まるかと思ったわ」
「何してんの?」
「え? あ……うん、片付けしてたの」
「片付け?」
「このプロジェクターをしまうだけなんだけど……」
「……なんでこんなこんがらがってんの」
春ちゃんの肩越しに見える機械に、延長コードが絡まっている。
ただ単にコンセントから外してしまうだけなのに、どうしたらこうなるんだろう。
「貸して、俺やるよ」
カーペットが敷かれた床にしゃがんで、固まりを少しずつ解いていく。
向かい合う形で春ちゃんも膝を曲げて、俺の手の動きをじっと見つめてきた。
ふわっといい香りがする。