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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第10章 目撃


「……私って……」



エレベーターのボタンを押して、そのまま壁に頭を付ける。


……いや、私もそうだけど


少しは彼にも責任があるんじゃないかと、勝手に遼くんのせいにする。


早く帰って来いとか、待ってるとか……って何でもない普通の台詞なんだけど


どうしてこうも、私の心臓はキュンキュンしてしまうんだろう。



「…………」



……ユキに、逢いたいな。


遼くんのことを、考える隙間も無くなる程に埋め尽くしてほしい。


大学で助手をするのは、あと2週間だ。


正社員になることが決まったというのに、離れるのが寂しい。


水曜と木曜、慣れ親しんだキャンパス内で


あのキラキラの笑顔を見れるのも、残り僅か。


その先は……?




「……見」

「………」

「蓮見」

「……は、はい!?」



名前を呼ばれて、ハッと我に返る。


慌てて顔を上げると、そこには……




「エレベーター来たけど」


「………!!」


「乗らねぇの?」




……空気が変わった。


言い表せないほどの、オーラを纏って


スーツ姿の宮本さんが、扉を右手で支えてくれていた。

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