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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第10章 目撃


* * *



○○木工までは、電車で15分、そこから徒歩で20分。


会社の隣りの区にあるから、車ルートの方が断然近い。


地下鉄の線路上に続く道を、営業車が快適に飛ばしていく。


これだと、約束よりも早く着いてしまいそうだけど


思い掛けない宮本さんの送迎に、胸がドキドキしてしまう。


じょ、助手席と運転席ってこんなに近かったっけ……



「あの、本当にご迷惑おかけしてすみません……」

「通り道だって言っただろ」

「いえ、そうじゃなくて……」

「なに」

「さ、沙月に申し訳ないなぁって……」

「仕事なんだから、申し訳ないも何もねぇだろ」



くだらないこと言うなと付け加えられて、宮本さんは片手でハンドルを切った。


運転、上手。


スピード出していないのにスイスイ抜いていくし、高級車に乗ってるみたいに静かだ。


静かな分、沈黙がいたたまれなくて必死に話題を探そうとする私。


えーっとえーっと……


あ、そうだ!

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