春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第12章 春の嵐
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……扉の向こうから、コツコツと足音が近付いてきて
インターホンが鳴る音が響くと
既に玄関でスタンバイをしていた私は、大きく息を吐いた。
「……今、開けるね」
ゆっくりと鍵を回して、扉を開くと
「こんばんは、春ちゃん」
「………っ」
「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」
薄暗いマンションの共同廊下に、太陽のような明るさが広がる。
ショッキングピンクのカットソーに、本革のブルゾンを羽織って
裾をロールアップさせた黒のクライミングパンツ。
相変わらず上から下までお洒落なユキが、私を見てニッと笑った。
セットした金髪に、細かい雨粒が光っている。
「……あ、雨降ってきたんだ」
「うん、俺がちょうど駅に着いた時にね。
走ってきた」
ふるふると頭を振るユキが、なんだか可愛くて
少しだけ緊張が解けて、私もつられて微笑んだ。