春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第14章 救いの扉
「……蓮見と綾瀬が、入社した年は」
その声で、顔を上げると
宮本は窓の外を見つめていた。
「ちょうど、一周忌を終えた後だったな」
「………!」
「俺も、参列させてもらって
喪服から着替えて出社したのを……今でも覚えてる」
「…………」
「……あれから、5年か……」
封印した思い出をそっと取り出すように、静かに呟いた宮本。
……まだ、入社して1年目が終えたばかりだったのもあり
家族葬にして、会社には秘密を貫いた俺でも
同期入社の宮本だけには、全ての真実を伝えた。
あれだけの、大きな事故でも
“ 親族 ” の死という形で、周りの余計な詮索を遮断することができたのは
信頼する部長と、この男の存在があったからだ。