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アシンメトリーと君

第2章 日常

「――はぁはぁ・・・会長・・・」


震える手で机につき、息を整えながら男が話しかけてきた。
それを無視するかのように俺は男の上から退くと、汚れた手を拭き、制服を整える。


「あ、あの・・・会長」

「・・・なに?」

「この一回で最後なんでしょうか・・・」


男はそっと涙を流しながら、抜けきってしまった腰で立ち上がりか弱く俺のシャツを握りしめ、訴えかけてきた。


「どうだろうね」


俺はその手をやんわり解かすと、ネクタイを締め、ブレザーを羽織る。
そして、相手の顔を自分の顔に引き寄せ耳元で呟く。


「なら、もう一回俺がそんな気分になるように誘って。

さらに気持ちよくしてあげるよ。
もっと激しく――」


ゆっくりと離れ、そしていつもの壇上でのことの様に「ね」とにこりと微笑んだ。


「は、はい」


男は汗ばんだ顔を真っ赤にしながら、返事をした。


「じゃあ、俺は仕事が残ってるから」


そう言い残すと、俺は教室を出て行った――。

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