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アシンメトリーと君

第2章 日常

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「あ、会長!お疲れ様です!
今朝頼まれた資料、さっき出来上がったので今渡しても大丈夫ですか?」

「お疲れ様、ありがとう。
大丈夫、受け取る」


空き教室から出れば、俺はいつも通りこの学校の生徒会長となる。

教室から出てすぐあったトイレで手を洗うと、汗を拭き取り髪を整えて表情を変えた。

いつも通りの生徒会長。


「あと、これ今朝先生から渡された次の会議の資料も一緒に。
あ、そういえばさっき副会長が会長に伝えたいことがあるって言って探してましたよ」

「何だろう。
すぐ行く、ありがとう」

「いえ」


生徒会室へ向かう廊下で役員とのやり取り。

生徒会室はA棟の1階という、食堂・購買からも比較的近いため人通りも多く、生徒が訪ねて来やすいようにという場所に在所する。

目の前は中庭ということもあって、この時間は弁当を食べたり喋ったりして過ごす生徒が多い。

そんな人目が多い中、役員以外で俺に話しかけてくる者も少なくない。


「い、稲葉会長!
これ、調理実習で作ったので良かったら食べてください!」


二人連れのブレザーの膨らんだ胸元に光る青色のピンバッジ。
一人の生徒の手元には可愛らしくラッピングされたクッキー。


「二年生?
調理実習でクッキー作ったんだ?」

「は、はい!
良かったら稲葉会長に食べてほしくて・・・」


クッキーを持った生徒のぽっと染める顔は緊張と期待が伺える。
俺は手に乗るクッキーを受け取ると微笑んだ。


「ありがとう。
生徒会の皆で頂くね」

「えっあ、はい・・・」


本当は俺だけに食べて欲しかったんだろうな。

瞳に映る生徒会長はさっき下級生を抱いてきたなんて思わないだろうに。

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