アシンメトリーと君
第2章 日常
「聞いてたの」
「クッキーの辺りから」
「最初からって言うんだよそれ」
「そっか、そうだね!」
林はさらに笑うとさっさと生徒会室へ入っていった。
それに続いて俺も入り、鈍いPCを起動させると腕時計に視線をやる。
「残り十分も無い・・・。
少し休憩しすぎた」
「休憩の仕方が大胆すぎるんじゃないの」
林は棚から拝借したお菓子を食べながら、机に置いてあった別のファイルと近くのプリントに目を通す。
「弁当も食べそびれた」
教室に置いたままの弁当を思い出しながら窓に寄りかかり外を眺める。
生徒会室の窓側は外庭が見える形になっている。
中庭とは一変して外庭は全くと言っていいほど人気が無く、一言では言えば寂しい所だ。
桜の木々などが中庭よりは多く植えられているため、あまり光は入ってこない。
一角を除けば。
「あ。また居る・・・」
小さく呟く。
ひっそりと置かれたベンチの中でも一番光が当たる場所に、一人の男子生徒が座って本を読んでいる。
長い髪に重たそうなメガネ。
キッチリと第一ボタンまで留めてそうな制服の着こなし。
ザザ―――と不意に春風が吹く。
散ってしまった桜を高く巻き上げると共に、視線の先の彼の髪を揺らす。
見え隠れする瞳。
構わず小説に落とされた目は夢中で字を追っているようだった。
ひっそりとしたあの場所で読み入る彼は、何物にも縛られず、干渉されず、ただただ自分の世界に入っている。
そんな印象だ。
その姿は俺にとってはいつもの光景。
いつからだろう。
あの場所で見かけるようになったのは―――。
「空斗~出来たから一応確認して!」
林の声に我に返る。
「・・・分かった」
「多分ミスはないと思うんだけど」
ヒラリとプリントを渡してくる林から受け取る。
何を考えていた――?
自分がよく分からない。
ただいつも通りの光景を見ていただけだ。
ただ、いつも通りの――。
「もしかしてミスあった?」
「いや」
再度確認に集中すると昼休み終了五分前の予鈴が響いた。
「お、もうそんな時間!
確認、放課後の空いた時間にでもお願いします」
「分かった」
起動だけさせてしまったPCを閉じると、流れで窓の外へと目を移す。
見据えた先にはもう誰も居らず、虚しく無人のベンチと散れた桜だけが見えた。
「クッキーの辺りから」
「最初からって言うんだよそれ」
「そっか、そうだね!」
林はさらに笑うとさっさと生徒会室へ入っていった。
それに続いて俺も入り、鈍いPCを起動させると腕時計に視線をやる。
「残り十分も無い・・・。
少し休憩しすぎた」
「休憩の仕方が大胆すぎるんじゃないの」
林は棚から拝借したお菓子を食べながら、机に置いてあった別のファイルと近くのプリントに目を通す。
「弁当も食べそびれた」
教室に置いたままの弁当を思い出しながら窓に寄りかかり外を眺める。
生徒会室の窓側は外庭が見える形になっている。
中庭とは一変して外庭は全くと言っていいほど人気が無く、一言では言えば寂しい所だ。
桜の木々などが中庭よりは多く植えられているため、あまり光は入ってこない。
一角を除けば。
「あ。また居る・・・」
小さく呟く。
ひっそりと置かれたベンチの中でも一番光が当たる場所に、一人の男子生徒が座って本を読んでいる。
長い髪に重たそうなメガネ。
キッチリと第一ボタンまで留めてそうな制服の着こなし。
ザザ―――と不意に春風が吹く。
散ってしまった桜を高く巻き上げると共に、視線の先の彼の髪を揺らす。
見え隠れする瞳。
構わず小説に落とされた目は夢中で字を追っているようだった。
ひっそりとしたあの場所で読み入る彼は、何物にも縛られず、干渉されず、ただただ自分の世界に入っている。
そんな印象だ。
その姿は俺にとってはいつもの光景。
いつからだろう。
あの場所で見かけるようになったのは―――。
「空斗~出来たから一応確認して!」
林の声に我に返る。
「・・・分かった」
「多分ミスはないと思うんだけど」
ヒラリとプリントを渡してくる林から受け取る。
何を考えていた――?
自分がよく分からない。
ただいつも通りの光景を見ていただけだ。
ただ、いつも通りの――。
「もしかしてミスあった?」
「いや」
再度確認に集中すると昼休み終了五分前の予鈴が響いた。
「お、もうそんな時間!
確認、放課後の空いた時間にでもお願いします」
「分かった」
起動だけさせてしまったPCを閉じると、流れで窓の外へと目を移す。
見据えた先にはもう誰も居らず、虚しく無人のベンチと散れた桜だけが見えた。