アシンメトリーと君
第1章 プロローグ
ある日の放課後。
校庭の所々から聞こえる運動部の活気のある声。
校舎からは生徒の騒ぎ声と楽器の音色。
―――ここ、校舎B棟2階多目的トイレからもいつもの騒がしさが響いていた。
「夏樹できた・・・?
もうこんな時間だし、バイトの時間まで間に合うかな・・・」
「あー、そんな言われなくても分かってる!
もうちょっとで出来るから・・・!」
僕が少し慌てた口調で言うと、僕の髪をセットしていた幼馴染の夏樹が動かしていた手のスピードをさらに上げた。
バイト先に向かう電車の出発まで後十五分。
急ぐのは仕方ないのだ。
「よし、できたよ!
ホント毎度毎度・・・
ちょーっと髪を上げて、ぱぱーっと整えればそのかっこいい顔が見えるのにワザと下げるとかもったいない・・・!」
夏樹は使った道具を直しながら、僕を見て呆れた顔をした。
「はいはい・・・それ毎回聞いてるよ。
でも、僕はいつもの姿が一番。
髪を上げるのはバイトの時だけ。
何回言ったって変わんないよ。
じゃ、今日もありがとう。
行ってきます」
僕は制服を整えて、さっと脇に置いてあった眼鏡を鞄へ入れるとドアを開けて駆け出した。
背中からは「がんばってね!」と夏樹の声が聞こえてきたので、振り向き、手を小さく振った。
夕暮れの太陽の日差しが、校舎の廊下を橙色に染めている。
放課後とはいえ、まだ先生や生徒がちらほら残っている。
教室の前を通る際にはそっと屈み、視線に気をつけながら靴箱まで行くと、最寄りの駅に向かって駆け出す。
バイト先は、ここから駅二つのところ。
今日も始まるんだ―――
僕は頬を緩めて、走るスピードを少し上げた。
校庭の所々から聞こえる運動部の活気のある声。
校舎からは生徒の騒ぎ声と楽器の音色。
―――ここ、校舎B棟2階多目的トイレからもいつもの騒がしさが響いていた。
「夏樹できた・・・?
もうこんな時間だし、バイトの時間まで間に合うかな・・・」
「あー、そんな言われなくても分かってる!
もうちょっとで出来るから・・・!」
僕が少し慌てた口調で言うと、僕の髪をセットしていた幼馴染の夏樹が動かしていた手のスピードをさらに上げた。
バイト先に向かう電車の出発まで後十五分。
急ぐのは仕方ないのだ。
「よし、できたよ!
ホント毎度毎度・・・
ちょーっと髪を上げて、ぱぱーっと整えればそのかっこいい顔が見えるのにワザと下げるとかもったいない・・・!」
夏樹は使った道具を直しながら、僕を見て呆れた顔をした。
「はいはい・・・それ毎回聞いてるよ。
でも、僕はいつもの姿が一番。
髪を上げるのはバイトの時だけ。
何回言ったって変わんないよ。
じゃ、今日もありがとう。
行ってきます」
僕は制服を整えて、さっと脇に置いてあった眼鏡を鞄へ入れるとドアを開けて駆け出した。
背中からは「がんばってね!」と夏樹の声が聞こえてきたので、振り向き、手を小さく振った。
夕暮れの太陽の日差しが、校舎の廊下を橙色に染めている。
放課後とはいえ、まだ先生や生徒がちらほら残っている。
教室の前を通る際にはそっと屈み、視線に気をつけながら靴箱まで行くと、最寄りの駅に向かって駆け出す。
バイト先は、ここから駅二つのところ。
今日も始まるんだ―――
僕は頬を緩めて、走るスピードを少し上げた。