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暗闇で恋しましょう

第1章 私と貴方の関係性

どうせ返事など返って来ないとタカを決め、調子に乗る。



「早く帰って来てね。あなた。私、寂しくて」

「.....誰が、あなただ」



そう言いながらも、こそばゆそうにひぃちゃんは笑うから、この行為は止められない。


うふふんと上気分でいると、戸を開けたひぃちゃんが止まる気配。


この後の言葉、私はよく知っている。



「....約束は」

「3つ
ここから“出ない”
ここには誰も“入れない”
ここのことは誰にも“喋らない”」

「.....守れよ」



いつもより低い声でそう呟いてから、ひぃちゃんは戸を閉めた。


階段を降りる音を聞きながら



守らなかったことがないから、私はここにいるのに

いつになったら信じてくれるのやら



私は毎度、そんなことを思う。


ふぅと息を吐き、振り返るひぃちゃんとの会話。


“いつものとこ”


私はそうひぃちゃんに言ったけど、実際はどこに行ってるかなんて知らない。


それだけじゃない。


私はひぃちゃんの多くを知らない。


唯一知ってるのは


名前と





私、橋立杏(はしだてきょう)を誘拐したのは彼、甘夏飛翠(あまなつひすい)ということだけ。





私と彼の関係性は、被害者と加害者。


ただ、それだけ。

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