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暗闇で恋しましょう

第22章 変化

それと同時、頬にじんわりとした温かさがあることに気付く。


この場にいるのは杏と俺だけで、そんな温かさを俺にもたらすことが出来るのは杏しかいなくて。


クリアになった頭に、一連の流れがくっきり思い浮かぶ。


視線を外し、うだうだ悩む俺→

そんな俺にやきもきした杏→

俺の頬を掴んで自分の方向、自分の視線とぶつかるよう俺の顔を無理矢理動かす→

“ごきっ”



あぁ、うん。把握



痛いくらい真っ直ぐだと感じた視線も、いつもは上下の視線が一直線だったから。


今のよしよし行為も、普段なら届かない筈なのに届いてるのはそれが理由か。


分かってしまえば、強引さが目立つ行為だ事で。


満足そうに撫で続ける杏を少し呆れ気味に見る。



………でも、あれがなきゃきっと俺は、ごめんなさいすら言えなかった



そう考えれば感謝さえしなければいけない立場なんだが………


どうにも気恥しいので、俺はお返しと言わんばかり、杏の頭をぐしゃぐしゃと撫でたのだった。

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