テキストサイズ

暗闇で恋しましょう

第29章 俺とあいつとそしてーー……②

俺の心は、喜んでいる。



「…………あの?もしかして、気を悪くなされましたか?」

「いえ、大丈夫です。あの………先程の話に戻るんですが、お礼をやっぱりちゃんとしたいので、お名前と良ければ、連絡先を」

「…………」

「……不審に思われますよね。怖いなら、別に無理にとは。今この場ででも返させていただければ」

「……ふふ……」

「?」

「あぁ、ごめんなさい。“風貌に似合わず”律儀なんだなって思ったら、なんだか」



さっきのお返しと言わんばかり、女性はにやりと口角を上げた。


俺はその仕草に、どうにも心がこそばゆくなる。



「大丈夫です。怖いなんて思いませんよ。私もちょうど、貴方の名前を、と思っていたところなので」



にこりと笑う女性に、やっぱり無防備だと思う中。


俺の心は確実に、彼女に惹かれていってたんだと思う。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ