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エスキス アムール

第12章 「風邪です!」









「いらっしゃいませ。」

店に入ると、
いつものように
いつものウェイターがいた。

いつもと違うことは
髪が赤くなったことだ。


心なしか、
俺を見て笑っているように見えるのは
気のせいだろうか。



「…髪の毛、赤くしたんだね。」


「…ええ。
…今日のご指名は?」



「アカリちゃんをおねが…

「アカリは風邪で休みです。」



「え…?」
すかさず、
風邪ですとにっこりと笑う彼に、
大丈夫なんですかと
聞こうとすると、

新しい客が入ってきた。



「よう。」

「いらっしゃいませ。」

「アカリいる?」

「ええ。こちらの部屋にどうぞ。」


………ん?



おかしいよね。
今の、絶対おかしかったよね。

今の、アカリちゃん指名だったよね。
俺指名したよね?
休みって言われたよね?



おかしいおかしいおかしいぞ?
差別か?差別か?



「え、あの、アカリちゃん…は?」

「風邪で休みです(ニッコリ)」


いやいやいやいや
ニッコリじゃ、ねーよ!



「でも今…
彼、アカリちゃん指名でしたよね?」


「風邪です」

「なんで俺は…」

「風邪です」



「あの…」


「風邪です」




………。






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