エスキス アムール
第29章 彼からの誘惑
それから一ヶ月が経った頃、
波留くんは、
時より何かを考え込むようになった。
朝早く起きて、
僕の腕からすり抜けると
リビングで何かをしている。
そうして、何時間か経つと
朝ごはんを僕の分まで作ってくれて
時間になると起こしに来て
一緒に食べる。
やってることは、
本当に奥さんみたいだ。
ただ、ご飯を作る前に
何をしているのかが気になる。
いつも起きてなにしてるの?
そう聞いてみたけど、
秘密。
そういって、はぐらかされた。
ああ見えて頑固だから、
当分教えてはくれないだろう。
今日は休みだ。
窓から光が差し込んで来て、
ゆっくりと、瞼を開ける。
そうすると、
僕を覗き込む瞳と目があった。
「おはよう。」
「おはよ…
めずらしいね。」
最近、起きても
波留くんはいないことが多かったが、
この日はまだベッドにいて、
頬杖をついて寝転がっていた。
良い匂いもしてこないから、
朝ごはんも作っていないみたいだ。
てことは、
今日は謎の日課を行っていないらしい。
「うん、今日はお休み。」
そういって、欠伸をする。
綺麗な喉仏が、
朝の澄んだ光に照らされて
思わず見とれた。