エスキス アムール
第29章 彼からの誘惑
急いで彼の額に手を当てて
熱がないかを確かめる。
平熱だ。
じゃあどこがおかしいんだ?
毎日主婦業みたいなことさせてるから、
精神的に病んじゃったのかな。
そんなにストレスだったのかな
僕と住むの。
もう一回、
額に手を当てる。
「熱なんてないよ」
波留くんは、呆れた顔をして
手を払いのけた。
「顔に書いてあったから。
噛みつきたくなったって」
「…」
まじまじと見つめると、
そんな見んなよ。と目をそらして、
「俺はいいよ。」
そう一言呟いた。
「なにが?いいの?」
その言葉に、
波留くんは少しみじろぐ。
だけど、その瞳は少し熱を持っていて
試すかのように僕を見ていた。
どうしたらいいんだ。僕は。
彼はこの間から
僕をどうしたいんだ。