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エスキス アムール

第42章 僕のシルシ

【高峰side】





「戻ってこいってさ」




営業だと言って俺を連れ出した要さんだったけど、30分くらい経った頃に大野さんから電話がかかってきた。


彼女を見たとき、明らかにそこには良くない空気が流れていた。

一瞬、本当に一瞬だったけど、空気が固まったのだ。


彼女の絵が気に入ったから、提案したことだったけど、俺はとんでもないことをしていしまったのではないかと、彼女を呼んだことを後悔していた。


要さんは隣で何も言わない。
一生懸命考えたんだけどな。

これだって、ピンと来たんだけどな。



きっと、これはボツになるだろう。
彼女が一緒に働くことはないだろう。




「要さん」

「んー?」

「あの二人って…」


どういう関係なんだと聞きたかった。
だけど、聞いてはいけない気もして。
途中で口を噤むと、要さんはこちらを伺って察したようだった。




「知り合いだよ。ただの」

「え…?」



返ってきた答えに、驚いて思わず要さんを見つめる。
知り合いなだけで、あんな顔をするだろうか。

内心ホッとしつつも、疑いは晴れない。



「でも…彼女…」

「なに?」

「さっきの彼女はおかしくなかったですか?」

「そう?俺も少ししかあったことないからわからないけど
あれが普通なんじゃない?」



要さんにしては見え透いた嘘をつくなと思った。
あれが普通なのではと思えるほど、彼女は普通ではなかった。


何かない限り、あんなに泣きそうな顔をするだろうか。




「彼女何かを隠しているんです」

「何かって?」

「わからないけど…昔のことは何も話してくれないし…」


不満を漏らせば、要さんはうーんと唸った。




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