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エスキス アムール

第44章 木更津の思惑 *

【木更津side】




面白いことを言ってくれちゃったなあと思う。



波留くんと要くんの二人の会話を跡をつけて聴いていた。
というより、要くんに話をさせるために波留くんを見送らせたようなものだ。

他の場所で話されたら、何の話をしたかわからないし。




案の定、波留くんは迷い込んでしまった。
良い機会だと思う。
正直言って、僕は彼の心の中から完全にはるかちゃんとやらがいなくなってくれた方が嬉しい。


僕がいるからはるかちゃんとは何も無いというよりも、僕が居なくてもはるかちゃんへの気持ちが何も湧いてこないくらい、彼女への気持ちを絶って欲しかった。


それには僕には作り出せないタイミングがあって。
このタイミングで要くんにばれたことは、かなり好都合だったと思う。


これを機にちゃんと考えるようになるだろう。
でも考えるだけではダメだ。

遠回りをしたとしても、僕のところに帰って来て欲しい。
いや、帰ってこさせる。
それが僕の目標だ。



だけど、僕が考えていることはうまく行く保証は無い。
一か八かの賭けだ。

もしかしたら、帰って来ないかもしれないという不安はある。
けれど今しか無い。
このままズルズルと時間だけが過ぎれば、
彼が完全に彼女から抜け出すことはできないだろう。
それに、本人は鈍感だから気づく事もないかもしれない。



それは大問題だ。
もう彼を手放すつもりは無い。
心の隅々まで僕のものにしたい。


例え彼女を傷つけることになっても、要くんに殴られたとしても、彼が僕の元にいるのなら、何も怖くなかった。

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