エスキス アムール
第54章 仲直りしよう
本当だったら、二人を別れさせるくらいまで、追い詰めるつもりだった。
それで波留くんが僕のところに来たら面白いななんて。
母親の一件がなければ、僕は波留くんを面白半分に好きになって、波留くんで遊んでいたかもしれない。
ぞっとした。
こんなに良い人を、失うところだった。
彼がすきだ。
本気で、すきだ。
別れ際、波留くんに気持ちを伝えそうになった。
波留くんの答えはわかっている。
だけど、弱っている僕が言ったら、波留くんははっきりとは拒絶できなかっただろう。
本来だったら、そこにつけん込んでいたかもしれない
けれど、恩を仇で返すようなことはできなかった。
あんなに親切にしてもらって。
波留くんの幸せをずたずたにすることなんてできなかった。
そうして、もしも彼と光平くんとの中を引き裂いたとしても、彼は僕のもとにいはこない。
僕のものにもならない。
母親が意識を取り戻してとてもホッとした。
けれど、別れ際、ありがとうと言って左手を握り締めながら、嬉しそうに笑う彼を見たら、
とてもとても、
心が傷んだ。