テキストサイズ

エスキス アムール

第66章 木更津の動揺






「青い薔薇?へえ、それは珍しいね」

「この近所でも青い薔薇は売ってないそうで、この間私も行ってみたんですけど、とても綺麗でした」

「へえ。それはいいね。」



そういったきり、何も言わなくなったので、仕事に集中したいのかと思って部屋から出ようとしたとき、


「それってさ、」

社長の声が上がる。
少し驚いて振り向くと社長はまだパソコンには向かわずに、こちらを見ていた。



「そこの花屋はいつまでやっているの?」

「ええと…確か19時まででした」

「その時間まで青い薔薇は残ってるかな」

「多分…数は少なくなっているかもしれませんが…、
プレゼントですか?恋人に」


もしやというか、絶対そうだと思って思って聞くと、社長はニッコリと笑う。


「波留くんね、好きなんだ、青が」


やっぱり惚気かーい。
でも、本当にご機嫌みたいで良かった。


「数が少なくなってしまうかもしれませんから、早めに私が買ってきましょうか?」


社長だから、花束で渡すのではと思って、そう、提案したのだけれど。


「いや、いいんだ。1本残ってれば充分だよ。……それか…11本かな」


そう言ってクスリと笑う。




11本は確か「最愛」

1本?って…確か、一目ぼれした人に渡すんじゃ…?


ご機嫌なのはいいけど、仕事をしてもらいたくて、社長の部屋を後にする。

不思議に思って、その後、社長が帰ったあとにパソコンで調べて笑ってしまった。


「もう、本当に…」



まったく。
本当に愛してるのね。呆れるほどに。

波留くんの相手が社長で良かった。
こんなに愛してくれているんだもの。




薔薇一本 「あなたしかいない」



波留くんが渡されて、照れまくるのを想像して、また笑った。




木更津の動揺ーFINー








ストーリーメニュー

TOPTOPへ