すべてはあの日から
第9章 想いよ、とどけ…
「…え?」
バッと顔を上げると、
そこには、黒くて上質なスーツを纏う斎藤さんがいた。
陽の光が斎藤さんのブラウンの髪を、オレンジに変色させている。
「やっぱり真央だった」
と、満足そうに笑みを浮かべる。
「あ、あの!実は…」
「ん?…あ、お菓子持って来てくれたの?」
「…は、い…」
「ごめん、これから……“交渉”で、出掛けなきゃいけないんだよね…」
申し訳なさそうにする斎藤さんに、
「い、いいんです。大したことじゃないから…、
いってらっしゃい」
とまくし立てて、手を振る。
「……真央?大切な話?」
訝しげに問う斎藤さんの顔を直視できない…