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Gentle rain

第7章 心と体

「かしこまりました。」

秘書の子は、その紙切れを拾い上げると、自分のデスクへと向かって行った。

「……そう言えば、君も社長令嬢だったね。」

ドアに手をかけて、秘書の子は立ち止った。

「知らないかな。その名前の人。」

「さあ……存じ上げません。至急、調べてみます。」

「ああ、頼むよ。」

ドアが閉まり、秘書の子の姿は見えなくなってしまった。


三科君に『他に社長令嬢を知っているか。』と聞かれ、知っていると答えられたのは、秘書の子のおかげだとも思えた。

彼女もまた、元社長令嬢だった。

父親は保険会社の社長をしていて、会社もそこそこ大きかった。

俺が初めて就職した会社と、同じフロアにあって、毎日のように顔を合わせていた。

俺の上司は、まだ30代のバリバリ仕事をこなす人で、一番尖っていたのかもしれない。

だが秘書の子の父親は、その時もう40代半ば程で、何かあると俺を励ましてくれていた。

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