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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

俺は頭を左右に激しく振った。

綺麗だからと言ってなんだと言うんだ。

元々夏目の家は、親が社長だったのだから、あの兄妹は金持ちの子供なんだ。

社長令嬢は金がかかっているんだから、綺麗なのは当たり前だろう。

自分の中に訳のわからない想いが渦巻く。


「階堂君。」

呼ばれてハッとした後、顔を上げた。

「森川社長……」

俺は久しぶりに見る顔に、心が浮き立つ。

「相変わらずいい男だな。」

「何を仰るんですか。自分よりもいい男なんて、他にたくさんいますよ。」

高らかに笑った年配のこの方は、森川さんと言って家具を扱う会社の社長だった。

森川社長も、夏目の父親を慕っていて、よく夏目社長の傍で一緒に雑談をしていた仲間だった。

「ところで先ほど一緒に話していた若い者は?」

「ああ、夏目社長の御曹司ですよ。と言っても、お父上の跡を継がれて、今は彼が社長ですがね。」

すると森川社長は孫の顔を見るような眼で、夏目に視線を送った。

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