テキストサイズ

同じ空の下で

第7章 秋桜

祈りを終えた後

行かずにはいられないところがある


イメージ通りの家

茶色の瓦屋根の二階建て

煉瓦の門柱があって茶色のフェンス

母はいつも門柱の上に季節の花の鉢植えを置いていた


今は知らない人が暮らすその家を

家があることを確認して安心してた


紅白の花水木はそのまま残っていて

今住んでいる人が丁寧に手入れをしてくれているのが、通りから見てもわかる


そこに立つと
あの頃の家族の笑い声までが聞こえてくる気がして

目を閉じて心の中で手を合わせる







でも

昨年そこを訪れると

その場所は更地になっていた

月日は確実に流れている


更地となった場所でどのくらいしゃがみこんでいたのか…

諦めて帰る頃には少し風が冷たくなっていた




もう、そこには行かない


新しい一歩を、踏み出すために

自分の中の止まったままの時を動かすために

時間の経過を確認できて

良かったんだと思いたい

ストーリーメニュー

TOPTOPへ