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はな*つむ

第2章 闇烏

 闇烏の手が氷雨に触れそうな所まで迫った時。
 氷雨は動いた。

 持ったまま、必死に離さぬ様にした符を闇烏の前にかざす。

「凍てつきなさい! 氷霊破(ひょうれいは)!」

 符に力と言葉を込めると符が輝き、符の中から真っ白な霧を纏った風が吹き出す。
風は一気に闇烏を飲み、包み込んだ。

 風が勢いを無くして消えて行く。
霧も消えると凍てついて動かなくなった闇烏だけがそこに残った。

「や、やったの」

 氷雨は恐る恐る立ち上がる。
手の中にあった術符はその役目を終えて焼け消えた。

「まあまあだな」

 影から出てきた神威が近付いて来る。
そしてまだ戸惑う氷雨に一枚の符を渡した。

「こうゆう小型以外の奴にはトドメを忘れるな」

 神威に言われ、氷雨は符を確認する。
 その符は破壊のみに特化した術が施されている物だった。

 頷いて氷雨は符を構える。

「滅(めつ)」

 唱えると符が赤い光を放ち、その光が帯を作りながら闇烏に絡み付く。
 絡み付いた帯は文字に変じて闇烏の中に吸い込まれた。

 次の瞬間、ガラスが砕ける様な音を上げて闇烏の肉体は粉々に砕け散った。

「……あ」

 氷雨の視界が揺れる。
 頭がくらりとして、世界が真っ白になった。

 倒れ込む氷雨を受け止め、神威は笑みを浮かべる。

「まだ未熟だが、さすが鳳来様の娘……か」

 神威は呟いてから氷雨の頭を優しく撫でた。

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