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小春食堂【ARS】

第29章 そんな俺も俺【雅紀】

営業所を出て、家の前まで帰って来ると、人影が見える。

ふわふわヘアのあの女の子は…

「みっちゃん!」

俺は駆け寄った。

「どうしたの、みっちゃん。こんな時間に。」

みっちゃんは、もじもじしながら言った。

「あの、雅紀くんのお家に電話したら、いつも帰宅はこの時間だって聞いて…。」

そうだ、お互いに携帯電話の番号を交換してなかったから…。
自宅の電話なら、卒業アルバムに載ってるもんな。

「私、雅紀くんに謝りたくて。ケンジくんのこと、雅紀くんに聞いて気を悪くしたよね?ごめんね。」

「いや!こっちこそごめん!謝るのは俺の方だよ!」

暗闇の中、二人ともがぺこぺこ頭を下げあった。

「言い訳になっちゃうけど…。ケンジくんのこと、妹に聞いて来てって頼まれたの。」

「みっちゃんの妹って、そういえばケンジと同級生だったね。」

みっちゃんは、コクンとうなづいた。

「私が同窓会に行くって言ったら、妹がどうしても雅紀くんに聞いてきてほしいって…。」

ケンジとみっちゃんの妹は、高校の同級生で仲もよかった。
時々うちにも遊びに来ていた。

「妹には、自分で聞けって言ったんだけど、恥ずかしいから無理!って…。」

「そうだったんだ。俺、変な勘違してごめんね。ケンジは今は彼女いないよ。仕事が忙しくってそれどころじゃないみたい。」

「そうなんだ。それと、もうひとつ質問があるんだけど…」

「ん、何?」

みっちゃんは、大きく深呼吸してから言った。

「雅紀くんは、彼女いる?」

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