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小春食堂【ARS】

第5章 俺がブロガーになった訳【翔】

「これは…」


店の片隅に積まれていたのは、サークルのミニコミ誌。

パラパラとめくると、相変わらずの賑やかな誌面。
当たり前だが、俺がやめた後も毎月きちんと発行されている。

誌面を通して、サークルのメンバーの顔が浮かぶ。

この文体は、あいつだな。やっぱ上手いな。読んでて引き込まれる。

写真は彼女だな。被写体のいい笑顔を切り取る。彼女の人柄のよさが写真にも表れてる。



『ミニコミ誌見てますよ。』
『カフェの記事の自撮り、最高だね。』
『あの記事の店に行ったよ。うまかった。』


今まで、読者がかけてくれた言葉が頭を駆けめぐる。

自分の書いた記事が、読者に楽しいひとときを与える。

サークルのメンバーは、時間と予算をやりくりして、途絶えることなく記事を書いている。

なのに、今の俺は…



俺は、みんなの記事に顔を埋めて泣いた。

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