テキストサイズ

小春食堂【ARS】

第7章 自分の両手でできることだけを【翔】

「でも、やっぱり無理やね。」

「なぜ…、ですか?」


小春さんは、俺をカウンター内の厨房に手招きした。

招かれるままに厨房に入ると、小春さんは木箱を取りだしふたを開けた。

「これ、何かわかる?」

木箱の中には、黒っぽい長さ20cmくらいのものが何本か入っていた。


「魚の干物、ですか?」


よく見ると、小骨の様なものがびっしり付いている。


「そうや。これが身欠きにしんや。」

「へぇ、さっき食べた、あれですか?」


小春さんはうなづいて、木箱のふたを閉めた。


「身欠きにしんて、手がかかるんや。
まずは、一晩米のとぎ汁に浸けなあかん。」

「一晩!?」

「そうや。一晩浸けて、きれいに洗って、やっと煮ることができるんや。」

「時間がかかるんですね…」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ