テキストサイズ

小春食堂【ARS】

第15章 自分だからできること【和也】

俺は、外まわりを終えて会社に戻った。

時間はすでに夜の11時過ぎ。
車を降りると、会社の三階に明かりがついている。

俺は、玄関横の自販機で缶コーヒーを2本買うと、階段を上がった。

明かりがつくデザイン室の扉を開けると、山さんがひとりでパソコンに向かっていた。


「山さん…」

山さんは、俺に気づくとこちらに向き直った。

「社長…。すみません、なかなか残業が減らせなくて…。」

俺は、首を横に振った。

「今日、鈴木産業さんに行ってきた。刷り直しの分は、折半することになりましたよ。」

「すみません。また赤字出しちゃいましたね。」

山さんは、頭を掻いた。

「いや…、全部うちが被らなくて済んで助かったよ。先方も、素直に非を認めてくれたし。」

「そうでしたか…。」


俺は、缶コーヒーを山さんに投げた。
山さんは、上手くキャッチし、ありがとうございます、と言った。


「あのリーフレット、評判よかったらしいですよ。上品で、なおかつ読みやすいって…。」

「そうですか。ありがとうございます…。」


俺は、缶コーヒーのプルタブを開けた。
それに続いて、山さんもコーヒーを開けた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ