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小春食堂【ARS】

第16章 マメに働いたら【和也】

「またまた豆ですか?」

「だ・か・ら、二宮さんが豆の時ばかり来はるから。」


今日の日替わり定食の小鉢は枝豆。


「しかも、この枝豆なんか変な色ですよ。」

「それは紫ずきんっていう豆や。黒豆の枝豆やで。ほっくりして、美味しいんやで。」


まぁ、うまいんだけどさ。


「これ以上マメに働いたら、俺おからになっちまいますよ。」

「二宮さんがおからになったら、私が美味しく料理してあげますよ。だ・か・ら…」

「だから…?」


小春ちゃんは急に怖い顔になって言った。


「おからになるまで働きなはれ!」


小春ちゃんは、いつも俺には厳しいんだ。


「結婚してくださいよ。」

「だ・か・ら、来世でな。」


わぁわぁ騒ぎながら定食を食べ終わると、L字型カウンターの向こうの、濃い顔のイケメンと目が合った。

殺し屋のような目付きで俺をにらんでいる。


「小春ちゃん、ごちそうさん。」


俺は、そそくさとお勘定を済まし店を出た。

【二宮和也編・おわり】

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