テキストサイズ

雨のち曇り、時々晴れ【ARS】

第20章 愛を叫べ【翔】

失恋した。

ずっと付き合っていた彼女に振られた。

理由はわかっている。

彼女は結婚を望んだけど、俺はそれに応えてあげられなかったんだ。

俺も、彼女と結婚したかった。

幸せな家庭を築きたかった。

仕事から帰ったら、彼女がいて。

あたたかい夕食が出てきて。

今日一日のことを、話ながら食べるんだ。

彼女の仕事が遅い日は、俺は料理ができないから。

待ち合わせをして外食するんだ。

もう夫婦なのに、恋人みたいに待ち合わせして。

ちょっとドキドキしながら彼女を待つんだ。

彼女の姿が見えても、わざと気づかないふりして。

本なんか読んでて。

彼女が俺の肩をポンと叩いて初めて、
『あ、来てたんだ。』
なんて白々しく言うんだ。

そして、腕を組んで予約したレストランに歩いて向かう。

そんな夢も、もう消えてしまった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ