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拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第15章 お正月

年が明け、1月2日。

朝にイチコから電話があった。

『京都駅に着いたらあとはタクシーで行くから、迎えに来なくていいよ。』

私はその言葉に甘えて、お節料理とお雑煮の準備をして待った。

さとぴは東京の人だから、京都のお節料理が口に合うか悩んだけど、これしか作れないからしょうがない。

できるだけの腕をふるった。

クワイは、芽を折らずに煮るのに気を使った。

だし巻きは、だしをたっぷりとってしっとりふんわり巻いた。

お煮しめは、お節料理の時だけは味を濃い目にする。
日持ちをよくする昔ながらの知恵だが、これがお節料理のお煮しめの味だ。

お雑煮も白味噌と丸餅だ。
味噌の白に、金時人参の赤が映える。

お餅は焼かずにやわらかく煮る。

座卓に小皿とグラス、干支の絵の箸袋の祝箸を用意した。

ビールも冷やしてある。

伏見の地酒も買ってきた。

昼を少し過ぎた頃、玄関の引き戸を開ける音がした。

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