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桜並木を見おろして【ARS・O】

第10章 アトリエ

私には店があるから、大野さんに会えない感傷に浸っている暇はなかった。

毎日、朝から料理の仕込みをして、昼になったら店を開けて、ランチタイムの混雑が一段落したら、明日以降のメニューを考えて食材の発注をかける。

夜になると夕飯のお客さんが来て、余裕があればビールを注いだりして話し相手になる。

閉店の時間になると、明日の仕込みをして、掃除をして帰宅する。

風呂に入って一息ついたとき、ようやく大野さんのことを思い出す。

東京に出てきて店を始めてから、それなりに苦労したけど、今は何とか安定して営業できている。

常連さんもたくさんできた。

店とお客さんが私を支えてくれた。

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