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君と僕の見ている風景

第20章 Scream

ー和也sideー


「潤くん入るよ?ココア入れた」


ノックをした後、マグカップを持ったまま寝室に入る。


潤くんはベッドに腰掛けたままこちらに視線を向ける。
その姿はやつれきって目は落ち窪んでいた。
綺麗な黒髪は…艶がなくパサついてて。
………無理もないよね…。


潤「………サンキュ…」


力なくそう呟く。


「さっき…刑事さん帰ったよ。明日また来るって」


潤「………そっか…」


そのまま潤くんの隣に座る。


翔さんが居なくなって…もうすぐ3日目。
相変わらず犯人の足取りは掴めないままだった。


潤「警察なんて…役に立たないな。こんなに探してるのに…まだ翔の居場所が分からないなんて…」


「………」


潤「翔が今…どんな思いで居るか…怖い思いしてるのに…助けにも行けないなんて…」


「潤くん…」


潤「ふっ、う…ごめ…」


涙を流す潤くんを俺は抱き締める。


潤「にの…俺…どうすればいい…どうすれば翔が帰って来る…?」


何も答えられない自分がもどかしい。
俺はただ潤くんを抱き締めるしか出来なかった。


そんな時…急に鳴った携帯。
………潤くんのだ。


潤「ぐすっ…ごめん…」


俺から離れ、携帯を取った潤くんの顔が強張った。


「潤くん…?」


潤「翔…!」


「え?」


携帯を覗き込むとディスプレイには『翔』と出ている。


潤「翔!」


潤くんは通話を押し、スピーカーにした。


潤「翔…翔か?翔なのか?」


「翔さん!?」


『………じゅ、ん…?』


電話の向こうから聞こえる…酷く掠れた声。
それは…紛れもなく翔さんの声だった。


潤「翔…!今何処だ!?何処に居る!?」


翔『………分からない…あいつ今…お風呂入ってて…玄関も…窓も…開かなくて…潤…助けて…』


潤「翔…!今行くから。そのままGPSをオンにしてて。いい?」


翔『………助けて…お腹…お腹痛くて…血が…』


潤「翔…!」


「翔さん。直ぐに行くから」


翔『っっ…来た…』


潤「翔!」


そのまま…通話は途切れてしまった。


潤「翔!翔!!」


「潤くん!潤くん行こう!」


潤「………うん!」


俺達はそのまま寝室を飛び出した。

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