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君と僕の見ている風景

第22章 friendship

「翔。太陽に会いに行かないか?」


翔「え…?」


そう問い掛けると…ソファーの隣に居る翔は驚いた様に振り返る。
本を読んでいた手が止まった。


翔「………」


戸惑った様に翔はうつ向いてしまった。


うちの実家に太陽を預けてから…もう1ヶ月半。
翔は…一度も太陽に会ってはいない。
俺は…いつも仕事帰りに実家に寄り、太陽に会ってからここに戻って来ていた。
翔は…誘っても首を縦に振る事は無かった。


理由は…何となく分かってる。
翔の…考えそうな事。


俺は手を伸ばし、翔の手を握る。


「………思い出す?お腹の子供の事…」


そう問い掛けると…黙って頷いた。


「そっか…」


翔「分かってる。太陽とは関係ないって。でも…太陽に会いたくなると…思うんだ。この子の兄弟…俺のせいで…」


「………」


翔「太陽に会わす顔ない…」


「でも…太陽はママに会いたいよきっと?」


翔「分かってる…俺も会いたいよ。でも…今は無理。もう少し時間が欲しいんだ…」


この時の俺は…翔が少し前向きになって…背中を押すつもりが…前から引っ張っていたのかもしれない。


「ほんの少しで良いんだよ。太陽の顔見てやってよ。あの事件と太陽は関係ないんだから…あの事件は…」


翔「お願い止めて!」


頭を抱えて翔がソファーでうずくまった。


翔「止めて…!事件の事は…言わないで…いや…」


少しずつ…身体が震え始める。


「し、翔…ごめん…!」


慌てて抱き締めようと手を伸ばす。


翔「っっ、嫌!!」


怯えた様に…翔は俺の手を払い、立ち上がった。


「翔!」


翔「来ないで!」


そのままリビングを走って出て行ってしまった。


「翔待って…!」


俺は立ち上がり、翔の後を追い掛けた。

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