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ポシェット

第7章 願い


水垢みたいにこびりついたまま離れられなくなったのは
いったいいつの頃からか
優しさだけを武器にして古傷をえぐろうとする人だから
なすすべなんて一つもなかった

穏やかに笑む瞳の向こうで
あなたの本音だけが見えない

だって変じゃないか
すがりつく手を
けして拒みはしないんだもの

掃き溜めから掬い上げて渡した
まがい物の言葉に
意味なんてなかったよ
飾りつくしてごちゃごちゃしていて
ただ華やかになっただけ

幼子みたいに欲しがらないで
下手に差し出したって
汚い嘘になるから

筋くれだった手を
握り返すことしかできない私を

不器用だって笑ってください

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