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ポシェット

第1章 衝動

 
あなたの首に手をかけた
衝動のままに手をかけた
閉じた瞼だけを見つめて
そっと手の平に力を込めた

書きかけのルーズリーフや
伝線したストッキングが散らばり
あなたの匂いが充満するこの部屋で

凍てついた
六畳の部屋で

あなたの首筋はしらじらしいほど熱く
あなたの喉仏はわざとらしいくらいに硬い
脈は一定のリズムを刻み
胸は規則正しい上下を繰り返す

あなたに恨みはないのです
あなたを愛しているのです

ただ
古びた線路や
時計の針が
生きている限り纏わりついてくる
しがらみが
たまらなく鬱陶しいだけなのです

衝動を押し込め
窓を開けた

夜明けはまだ遠い

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