
ポシェット
第16章 記念日
もう長いこと
モノクロ色で色味のなかったカレンダーに
久しぶりに印を付けた
インクの少ない
赤いマジック
不格好で歪なハート
なんだかすごく滑稽だね
赤いシミ
ひとつひとつ減っていって
紙の上だって
今じゃ真っ白
ぬるま湯みたいなキミとの時間
知らぬ間にすぎていく
振り返れば確かにあるのに
記憶を上手に辿れない
道端に咲く花の名前を
思い出せない感覚に似ている
白々しいイベント事にも背を向けて
どれだけの月日が
流れたのかな
キミとの日々のひとつひとつを
心に刻み込まなくなって
閉鎖的な場所が好きだった
体温だけあれば良かった
だけどたまには
外を歩いてみようか
嫌いな人混みかき分けて
手だけは離さないで
赤いキャンドルが欲しいな
テーブルの上に飾ろうよ
夜はすごく長いんだから
今夜は一分一秒を
かみしめて過ごすの
温かい紅茶でいいかな
甘いのダメなのわかってる
ケーキじゃなくて
パイにしようか
シャドーの色の些細な違いに
気付いてくれる
キミが好き
