
ポシェット
第3章 うらはら
今さら泣き言なんて言われても困る
置いていったのはそっちでしょうに
何一つ
足りないものなどないのでしょう
伸ばした手の平はやけに白くて
静脈の色が透かし見えた
振り払ったのは貴方だった
醜いわたしの腕を
振り払ったのは
猫なで声で甘えてきたって
美味しい餌などやるもんか
餓えに蝕まれればいい
遠いところに行ったんでしょう?
会えない場所にいるんでしょう?
必死に刻み込んだ記憶は
それでも色褪せ始めている
蒼い夜はまだまだ長い
わたしの決意をじわじわあぶる
赤い手帳はそのままで
無料通話も残しままで
紙の上の赤い染みばかり
数を重ねているようで
わたしは
まだ
夢が叶ったら帰っておいで
片道切符をプレゼントするよ
何か掴んだら戻っておいで
隣はずっと
空けておくから
